ギリシャ神話から読み解くおうし座の由来「牡牛に姿を変えたゼウス」「牡牛に変えられたイオ」

おうし座

おうし座の由来について知っていますか?自分の星座であっても、由来までは知らないという人がほとんどではないでしょうか。
この記事では、「おうし座についてもっと知りたい」という方や「星座にまつわるギリシャ神話に興味がある」という方に向けて、おうし座の由来となったギリシャ神話を書いています。

おうし座の由来と言われているギリシャ神話は「牡牛に姿を変えたゼウス」という説と「牡牛に変えられたイオ」の姿という説の二つがあります。
どちらも面白い話ですので、ぜひどちらも読んでみて下さい。

牡牛に姿を変えたゼウス

テュロスという町に、エウロペという名の美しい王女がいました。

ある日、エウロペは侍女たちと一緒に花を摘んでいました。
エウロペを見たゼウスはその美しさに一目惚れしてしまいます。

ゼウスはエウロペに近づくにはどうしたら良いか考えます。
ゼウスは白い牡牛に姿を変えて、エウロペに近づくことにしました。

山の牛を女たちの近くへ行かせ、白い牡牛もその中に混ざってエウロペに近づいていきます。
白い牡牛はめずらしいので、女性たちにすぐに気に入られました。
また、白い牡牛は素直でおとなしい態度だったので、エウロペも気を許して頭や背中を撫でていました。

すっかり気を許したエウロペは、白い牡牛にまたがってみることにしました。
その時でした。エウロペを乗せた白い牡牛は、ものすごい勢いで走り出します。
エウロペはツノをつかんで落ちないように必死で、あっという間に連れ去られてしまいました。

白い牡牛とエウロペは海を渡って、遠く離れたクレタ島に到着します。
クレタ島に到着するとゼウスは本来の姿を現し、エウロペに愛を打ち明けました。

ゼウスとエウロペは愛し合い、のちに三人の子供が生まれました。

一方、エウロペの父・アゲノルは娘が連れ去られて大騒ぎします。アゲノルは三人の息子たちに「エウロペを連れて戻るまで帰国するな」と命じます。
息子たちは結局エウロペを探し出すことができず、それぞれ他の場所に移り住んだのでした。
(終わり)

ゼウスによって牡牛に変えられたイオ

川の神イナコスの娘に、イオという美しい女性がいました。

ある日、ゼウスはイオを見つけてとても気に入ります。
ゼウスは黒い雲でイオを囲み逃げられないようにして、自分のものにしてしまいました。

天空から地上を眺めていたゼウスの妻ヘラは、ゼウスが天空にいないことや、地上の一部に黒い雲が発生していることを怪しく思い、地上へ向かいます。

浮気しているところをバレそうになったゼウスは、イオを白い牡牛に変えてしまいます。
ゼウスは牡牛と遊んでいただけで、浮気はしていないとヘラに誓います。

浮気を疑っているヘラは、ゼウスから白い牡牛を貰うことにします。
ゼウスは断ることができませんでした。

牡牛を野放しにしておくと、ゼウスがまた浮気をするのは明らかです。
ヘラは、全身に100個の目を持つ怪物アルゴスに牡牛を見張らせることにしました。
アルゴスの目は交代で眠るため、24時間全ての方向を見張ることができたのです。
アルゴスは牡牛を森の中に連れて行き、逃げ出さないようにオリーブの木につなぎました。

イオを救い出したいゼウスは、ヘルメスにイオを助けるように命令します。
ヘルメスは地上に降り、羊飼いの格好をして笛を吹きながらアルゴスに近づいていきます。

アルゴスは笛の音色を気に入り、ヘルメスに笛を吹かせます。
ヘルメスは眠りを誘う曲を吹き続け、ついにアルゴスは100個の全ての目を閉じて眠ってしまいました。

アルゴスが眠ったのを確認すると、ヘルメスは剣でアルゴスの首をはねました。

アルゴスを倒したことによって解放された牡牛のイオですが、今度はヘラが牡牛にアブを送り苦しめ、逃げ回ることになります。大地をさまよい海を渡り、ついにはエジプトにまで渡ってしまいました。

ここに来てゼウスは「もうイオには手を出さないから許してやってくれ」とヘラに頼み、イオを人間の姿に戻してあげたのでした。
(終わり)

説明、考察

「エウロペを連れ去るために牡牛に姿を変えたゼウス」と「ゼウスが浮気しているところをバレそうになって姿を変えられてしまったイオ」。この二つがおうし座の由来と言われています。

どちらの話も、ゼウスは浮気しています。

エウロペの話では、近づくために自らが牡牛となります。
エウロペが連れ去られるシーンが描かれた「エウロペの略奪」という絵画があるのですが、この絵の牡牛には頭に花の輪っかが乗っており、女性たちが牡牛を気に入って心を許していたことが分かります。

また、ゼウスに連れ去られたエウロペですが、ヨーロッパ(Europe)の語源になったとも言われています。
ゼウスがエウロペを口説き落とす時に、大陸に彼女の名前をつけることを約束したそうです。

牡牛に姿を変えられてしまったイオは、ゼウスに振り回されて散々でしたね。

イオはその後、ゼウスとの子・エパポスを生みますが、ヘラの命令でエパポスはシリアに隠されてしまいます。イオはシリア中を駆け巡り、無事に再会することができました。

ヘラの嫉妬心は強く、イオは大変な目に遭いました。

一方でエウロペはヘラによる嫌がらせは受けていません。バレなかったのか、ヘラが容認していたのかは分かりませんが、嫉妬深くてすぐ浮気を察知するヘラにしては珍しい話となっています。

まとめ

この記事ではおうし座の由来となったと言われる二つのギリシャ神話を紹介しました。
おうし座について深く知ることができたでしょうか。
少し難しかったという方は、登場人物の説明を読んでからもう一回読んでみてください。

登場人物などの説明

エウロペ:テュロスの王・アゲノルの娘
ゼウス:ギリシア神話の最高の神、全知全能の存在
クレタ島:ギリシャの地中海に浮かぶ島
アゲノル:エウロペの父でテュロスの王

イナコス:イナコス川の神、イオの父
イオ:イナコスの娘
ヘラ:ギリシア神話の最高位の女神、ゼウスの妻
アルゴス:100個の目をもつ怪物
ヘルメス:神の伝令使、ゼウスの使い